空き巣←空いてない

ちょっと早めに目が覚めた。
別に出社が早い分には本来誰も困らないのだが、折から液晶ディスプレイの調子がよろしくなかったので、この機会にいろいろ段取りつけとくかと思ってメーカーのサポートに電話したり、運送業者に連絡して返送手段を確認してたりするうちに、すっかり普段通りの時間どころか少し遅いぐらいになってしまった。
ちょっとだけ慌てて着替えていると、玄関のインターホンが鳴る。
一瞬、「先日ポチったヒートテックが来たのかな」と考えたが、しかしあれは最速で木曜出荷と書いてあったはずだし、そもそも時間指定で注文してある。他にも宅急便が届いたり誰かが訪ねてくるような予定はなかったはずだ。ということは。

フレッツの勧誘かエホバか真光か分からないが、いずれにしてもこんな平日の昼間っからノンアポでひとんちのインターホン鳴らすようなのにロクな奴はいねえ(前に来たエホバはかわいかったけどね!)。そう思って無視することにした。
もし緊急性のある用件で誰かが来たのなら、2度3度鳴らすだろうから、そしたら出てみればいい。


するとだしぬけにドアノブががちゃがちゃと音を立てた。
何事だと思ったが、すぐに
「あ、まさか」
オレはそのまま部屋の奥から、人生で二番目か三番目ぐらいの勢いで息を殺し、そーっとドアのそばへ忍び寄った。
ドアスコープから外をうかがうと、ノブのあたりにいかにもな感じのオッサンが身をかがめて、上着のポケットから何かを出そうとしている。


あーやっぱり思った通りだ。多分な。

さて。
どうやらこのオッサンがやろうとしてるのはピッキングである。ウチのカギはディンプルキーなのでそうそう容易くは破られないだろう(masah情報によると初期のディンプルキーは既に業界では攻略済みらしいが)。このままがんばって開けてもらって、笑顔でウェルカームと歓迎してみようかなとかそういえばベイダー卿のマスクは初台に置きっぱなしだったなとか窃盗じゃなくて最初から強殺目的ならオレ終わったなとか一瞬でいろいろ考えたが、まあここは手堅くいこうか。ハッキリと滑舌良く、普段よりちょっと大きな声で。


「なにかごようですかあー?」


するとオッサンは何事かもにょりながら、ものすごいスピードで階段の下へすっ飛んでいった。
まずは一安心。
朝起きたそのままのタイミングで家を出てたら、もしかしたらやられてたかもなあ、ということはオレはLGのクソモニタに感謝しなきゃいかんのかな、とも考えたがそれは関係ないと結論づける。
少し時間をおいてドアの外に出て、ドア、カギ含めて特に被害がないことを確認。そうなると110番するまでもないので、ふつうに出掛ける準備をして、結局起きた時間とは関係なくやっぱり出社が遅くなる旨を職場に連絡してから、駅の交番へ寄った。
交番では小太りの人の良さそうな警官がでてきて、大まかに出来事を説明したのちに、防犯についてのありがたいお話しをいくつか頂戴する。
「時節柄多いですから、気をつけてくださいね。ご協力ありがとうございました」
あと一応建物の管理会社にも電話して、ちょっと疲れを感じながらも改札へ向かうと中央線は人身事故でとまっていた。


('A`)